Interview
国民健康保険小松市民病院
石川県小松市
病床数 : 340
看護師がパソコンではなく「患者」に向き合える時間を生み出すことを目指し、看護の本質を取り戻し、看護の質向上にも貢献できるチームコンパス
-
01導入のきっかけ
当院では、看護業務の可視化とセル看護提供方式®の浸透度確認を目的として外部調査を実施しました。その結果、看護記録に要する時間が全看護業務時間内の約20%を占めていました。さらに、日中は患者対応が優先され、16時以降に記録が集中し、これが時間外勤務の最大の要因となっていました。 看護記録そのものにも、「電子カルテの標準計画に依存し、個別性のある看護計画が立案できていない」「用語が統一されず、評価・連携が困難」「患者の状態に合わせたタイムリーな入力ができていない」といった課題を抱えていました。 これらの課題を解決し、看護記録の「ムダ」を徹底的に排除すること、そして何より看護師がパソコンではなく「患者」に向き合える時間を生み出すことを目指し、看護の本質を取り戻し、看護の質向上にも貢献できるチームコンパスの導入を2023年5月から導入しました。
-
02導入による変化
チームコンパス導入後、数々な成果が得られました。一般病棟における時間外勤務時間は、2022年度の8,449時間から2024年度の6,984時間まで減少し、これは約337万円の人件費削減効果に相当します。 導入後の看護師アンケートでも、「看護記録による時間外業務は減ったか」に対し83%(そう思う31%+ややそう思う52%)、「業務時間に余裕はできたか」に対し78%(そう思う18%+ややそう思う60%)が肯定的な回答を示しました。 生まれた時間は、患者との対話、緊急入院対応、清潔ケアといった質の高い看護実践に充当されています。さらに、早く帰宅できた時間は家族との時間や趣味など私生活の充実に活用されており、ワークとライフの充実という「好循環」を生み出しています。また、ベッドサイドでの逐次入力率も85%以上を維持し、特に新人看護師の入力率が高く、安心して看護に向き合える時間を創出しています。医師からも「深夜勤務の看護師にバイタルサインを聞く必要がなくなった」と、情報共有の改善が評価されています。また、ダッシュボード機能のRRSデータを活用することで、患者の急変予測を情報共有、早期の急変対応につなげています。
-
03導入を検討している病院に向けて
医療の質向上は、職員一人ひとりが「働きやすさ」と「働きがい」を実感できる環境なしには実現しません。当院は「やりたい看護の実現」を目標に、チームコンパスの導入を通じて「業務する」から「看護する」への意識転換を促す改革を推進しました。導入前は「電子カルテと混乱しないか」という不安もありましたが、チームコンパスは操作が非常に簡単で、現場にすぐに馴染みました。特にプロセスチャート画面では、知りたい患者情報がまとめて一画面に表示されるため、情報収集のスピードが格段に向上しました。 「看護記録のムダをなくし、看護に向き合う時間を生み出す」という目標を共有できれば、チームコンパスは必ず強力なツールとなります。まずは小さな一歩から、改革を実現してください。
-
導入にあたり大変だったこと
診療録である看護記録方式の変更は、病院全体に混乱や反発を招く可能性があり、組織的な戦略が最も大変な課題でした。そこで私たちは、コッターの8段階変革理論を用いて改革を進めました。まず、看護記録による時間外勤務の現状を院内委員会で説明し、変革の必要性の理解と協力を得て予算確保につなげました。 次に、看護部内に看護情報DX部門を設置し、看護記録委員会が中心となり活動を開始。医師には院内クリニカルパス委員会委員長(診療部長)が、看護部やコメディカルへは看護部長が、導入目的を明確に説明し、全職員への浸透を図りました。操作運用面では、DX部門が中心となり部署に出向いて丁寧な指導を繰り返しました。医師向けには運用説明会を開催し、電子カルテ上にチームコンパス経過表へ移行するアイコンを増やすなど、「ワンクリックでも少なくする」工夫をしました。 病院長、診療部長、医療情報担当者といった協力支援者の支えもあり、組織的な戦略を徹底した結果、導入から実装、操作習熟までをスムーズに進めることができたと実感しています。
-
導入にあたり最も重要視した点(機能)
看護師が看護に向き合える時間を生み出すことに加え、私たちはチームコンパスの「次世代型看護記録システム」としての特徴を最大限に活用することを重要視しました。 ①個別性のある看護計画立案と実践機能: 患者の状態によってユニットが展開し、PCAPのパスとイベントによって、画一的ではない、患者に合った看護計画の立案と実施を可能にします。 ②看護ナビ機能による質の標準化: 看護ナビ機能の搭載により、個人の力量差による看護の「ムラ」をなくし、誰もが高い質の看護実践を行えるようにサポートします。また、逐次入力によって記録時間の短縮を可能にします。 ③看護実践用語標準マスター準拠: 全国共通の用語・物差しによる評価や記録が可能となり、データに基づいた客観的な看護の評価・改善を実現し、質の担保に貢献します。 これらの機能によって、単なる効率化に留まらず、個別性のある質の高い看護実践を目指すことができるようになりました。