Interview
JA愛知厚生連 海南病院
愛知県弥富市
病床数 : 540
既存の看護記録を見直し、新たな記録方式の導入。看護のやりがい感を高めるための、働きがい改革の推進。
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01導入のきっかけ
看護職員は記録に多くの時間を要し、一般病棟の業務量調査においても看護記録時間に占める割合が高く、負担感が多くケア時間の確保が困難であることが課題でした。既存の看護記録は叙述記録を基本としていましたが、日々の看護記録は患者の思いを反映し、看護師の思いも含め丁寧に記載されているものの、患者の全身状態をすべて反映させる記録とは言えない状態でした。また、NANDAを引用し当院で作成した看護診断は、看護過程の展開を支持するものとして作成したものの、電子カルテのシステム上の問題やフォーカス記録による記載方法との乖離もあり、継続看護への活用が不足していました。看護記録のあり方を検討する中、AIの活用による記録システムや、音声入力による記録システムなどを模索する中、同県厚生連病院より、チームコンパスに関する情報を得ました。その後、チームコンパス導入病院において、導入から現在の状況を聴講し、利点、欠点についてレクチャーを受け、看護記録の変革が実現できるのではないかと感じました。看護管理者として導入への強い決意を持ち、その後3ケ月あまりの期間で導入を決定しました。
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02導入による変化
チームコンパス導入後、「叙述記録中心の記録から、経過表に反映する記録」への改革を意識付けしたものの、導入直後、「記録を書かないシステム」といった誤った解釈により、診療部と共有するための記録が不足した状況でした。しかし、チームコンパス推進者による指導強化、看護管理者への指導により、チームコンパス本来の活用が進み、患者の治療過程に応じた看護ケアの展開を支持し、医師と情報共有できる記録として充実しつつあります。 そして現在、多職種協働で活動するNST(栄養サポートチーム)やDDST「認知症・せん妄サポートチーム」、SST「摂食嚥下サポートチーム」などのチーム活動において、イベント追加による関連する観察項目、ケア項目、指導内容等は、チーム活動に必要なデータを焦点化して活用できることから、この運用によるチーム活動の成果を期待しています。今後も新たな機能を受け入れながら、看護の質向上を支援するシステムとして、チームコンパスの更なる活用を推進していきたいと思います。
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03導入を検討している病院に向けて
これまでの看護ケアにおいて、その妥当性を評価した時、実に無駄が多い事に気づきました。その一つが看護記録であり、慣習化された看護記録方式自体が見直しの対象であると感じました。看護記録において、本質的な記録のあり方を検討する過程で、このチームコンパスに出会いました。もし看護記録に対する見直しが必要ではないかと感じている施設があれば、このチームコンパスによる看護記録改革は、無駄の削減、ケア時間の確保、患者状態に応じた看護の展開を支援し、患者状態の評価、周辺機器等の可視化など、新たな改革を推進できるシステムと言えます。しかしながら、導入に向けては、電子カルテとの共存や関連する外部システムとの連携など多くの検討課題もあります。そのため、強い改革意識を持つチームを構成し、新たな看護記録方式による看護のやりがい感、働きがい改革を推進していかれることをお勧めいたします。
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導入にあたり大変だったこと
導入前の検討期間が短く、導入後システムを活用しながら課題を抽出し、当院に適した運用を構築しました。看護記録委員が中心となり、指導を強化しましたが、スタッフ全員が標準的な運用を獲得するまでには数か月を要しました。組織特性として、下位の2割は常に存在し、パソコンが苦手なスタッフは、電子カルテの活用も苦手な上に、新たなシステムの導入には抵抗感もありました。また診療部においても、一部の医師は変化を嫌い、ワンクリックで切り替える単純動作にも不満を訴えていました。しかし、その存在は2割程度であり、想定範囲内の人数でした。この2割の存在は、システム活用に対する意見提示者として、一部要望を聞きながら、必要時運用を再検討しながら、現在の運用が成立しています。今後は、病院全体でシステムが活用できる体制を整備していくことが課題であり、今は導入時の大変さを振り返ることはなく、新たな課題達成に向け前進中です。
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導入にあたり最も重要視した点(機能)
導入にあたり重視したのは、推進メンバーの構成です 。新たなシステムの導入には費用が必要であり、その活用と効果は病院長はじめ管理者からも期待され、失敗は許されないと言ったプレッシャーもありました。そのためブレない強いリーダシップの発揮が必要でした。しかし、それ以上に最も重視したのは、推進メンバーの構成と、推進者の活躍促進です。大きな変革には、管理者の活躍は必須ですが、管理者を推進メンバーとして構成しても、、運用上の課題をリアルに反映することはできないと考えました。そのため臨床現場で活躍するスタッフを推進メンバーとして選出し、スタッフだからこそ発案できる提案事項を吸い上げながら、新たな記録システムを導入したことは、当院におけるチームコンパス推進の成功要因と言えます。